何も変わらなかった朝 昭和歌謡 保志あかね「行き先のない切符」

「キサス キサス キサス」が答えを出さない夜の歌だとしたら、
「行き先のない切符」は、答えを出したあとも、何も変わらなかった朝の歌だ。

前回が「酒」なら、今回は「駅」「ホーム」

切符を握ったまま、動けない

2002年にリリースされた保志あかねのシングル
「行き先のない切符」。

作曲は 平尾昌晃。
数多くのヒット曲を世に送り出してきた作曲家である。

だが、この曲は走り出さない。

未来へ向かう高揚も、遠くへ逃げる決意もない。
あるのは、どこかへ行きたい気持ち。でも、どこへ行けばいいか分からない時間。

「切符」という具体的な物が提示される。
けれど実際には、どこにも移動しない。

ここに、この歌の静かな核心がある。

平尾昌晃が描いた“戻れなさ”

平尾昌晃は、
数多くのスターを送り出してきた作曲家である。

だが、この曲では大仰な展開を選ばない。

サビは広がる。
だが、開放は大きく叫ばない。

旋律は伸びる。
だが着地は柔らかい。

どこかに「引き返せない」感覚が残る。

それは、後悔ではなく、
戻るか進むかを決めきれないという静かな認識だ。

作曲家・平尾昌晃。多くの歌謡曲を手がけた存在

夜と朝の関係

「キサス キサス キサス」が迷いの中で立ち止まる夜なら、
「行き先のない切符」は、夜が明けても、まだ決めきれなかった朝である。

この2曲はA面とB面というより、
夜と朝の関係に近い。

夜に迷い、
朝になっても行き先は決まらない。

それでも歌だけが残る。

誰もいない夜のホーム

いま聴く意味

2000年代初頭の歌謡曲。
派手な物語よりも、余韻が似合う時代の一曲。

現代は「動け」「決めろ」「前に進め」と急かされる。

だからこそ、この歌は沁みる。

進めない日もある。
行き先が分からない時間もある。

それでも、切符を握ったまま立っている。

それ自体が、ひとつの物語だと教えてくれる。

2. 行く先のない切符

発売年
2002年

収録CD
シングルCD「キサス キサス キサス」カップリング
レーベル:フリーボード
品番:WKCL-7196

作詞・作曲
作曲:平尾昌晃
作詞:藤波啓介

概要
駅・切符という象徴を用いた叙情的歌謡曲。
浜圭介作品とは異なり、旋律線により大きな抑揚があるが、歌唱は抑制的。

↑チームブレンダ

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